さとやまで開催されたイベントの報告(2025年4月〜2025年6月)です。2021年3月以前はこちら
森の昆虫(参加39名)
今回のメインテーマは「樹液に集まる昆虫たち」。講師の川北 裕之 先生 作成の資料には“樹液の出るしくみ”や“樹液酒場”に集まってくる昆虫の番付表などが載っていて面白い!とはいえ、前日まで雨模様で気温が低かったので、昆虫たちがどれだけ現れるのか気にしつつ出発しました。歩き始めてすぐ、上空を何羽ものタカが舞っているのに気づいて騒ぎに!オオタカが2羽、「ピーエー」と鳴くノスリが3羽、広い空を悠々と旋回しています。5羽ものタカが同時に上空を舞う光景は滅多に出会えるものではないので、ちょっと興奮しました。森へ入る前、最初に出会った昆虫はモリチャバネゴキブリやタケカレハの幼虫(毒あり注意!)でした。オオアオイトトンボやオオスズメバチ(女王の死体)なども観察しながら、森の中の広場へ。残念ながら樹液が豊富に出ている木がなく、オオヒラタシデムシ、チャタテムシ類、ホンドクロオオクチキムシ、モリチャバネゴキブリ、ナミガタシロナミシャクなどを観察しました。東近隣公園の散策路の真ん中には、何故か巨大なカブトムシ幼虫の死体とヨツボシモンシデムシの死体が転がっていてビックリ!この日、樹液酒場の番付表に載っているような人気昆虫には出会えませんでしたが、昆虫についての知識が豊富な子もいて、なかなかに賑やかな観察会となりました。
クヌギの根本からにじみ出る樹液を見てみます。
森の中の広場で昆虫探し
川北先生と一緒に見つけた昆虫を調べます。
タケカレハの幼虫(有毒)
オオスズメバチの死体から 毒針(産卵管)を取り出して観察してみました。
チャタテムシの一種(数百匹の集合体) ※赤丸内の黒いブツブツ
ムシヒキアブ科の一種(ハエを捕食)
イチモンジカメノコハムシ (ムラサキシキブの葉の裏)
春の樹木(参加13名)
春の樹木の花や新葉を観察しました。講師は、「樹木博士入門」などの本を出版されている、NPO法人 自然観察大学の飯島 和子 先生。まず、出発地のおおたかの森センター周辺の植え込みで、関東の里山を代表する樹木の一つである、スダジイ、イロハモミジ、シャリンバイなどの樹木を観察しました。次に、市野谷の森の林縁で、サイカチ、アベマキ、コクサギ、ムクロジなどの樹木を観察しました。道にはムクロジの果実がたくさん落ちていたので、笛を作ってみました。果実は堅く、フタのような部分をピンセットで取り外し、空いた穴に唇を付けて強く息を吹くと、中の種子が転がって“ピュルピュル”と、ホイッスルのような鋭い音がします。飯島 先生が見本を見せますが、なかなかうまく鳴らず、家に持ち帰って練習することになりました(汗)。さらに林縁を歩くと、シラカシ、ヤマグワ、エノキ、ムクノキ、ガマズミ、ゴンズイ、アカメガシワ、エゴノキ、スイカズラ、ムラサキシキブ、マユミ、ホオノキ、シロダモ、イヌシデ、サンショウなど、雑木林の樹木が次々と現れました。森の中では、ウグイスカグラの赤い実が熟していました。さらに森の中の広場では、ホトトギスの鳴き声が響き渡り、樹木の観察で疲れた頭を癒してくれました。
飯島 先生とムクロジ笛づくり
林縁での樹木観察①
林縁での樹木観察②
シャリンバイ
スダジイ
アベマキ
サイカチ
コクサギ
シロダモ
ホオノキ
講座「渡り鳥たちのフシギ なぜ渡るのか、どういうルートをたどるのか」(参加65名)
おおたかの森センターで、野鳥研究の第一人者で東京大学名誉教授の樋口 広芳 先生に講演をしていただきました。毎年春には、市野谷の森にもキビタキが来て、市内にはサシバも渡ってきます。最近はほとんど見られなくなりましたが、江戸川沿いの新川耕地にはムナグロやチュウシャクシギなどが渡りの中継地として利用していました。何千キロも北へ南へ渡っていく鳥たちは、何故そんな行動をとるのか、どういうコースを辿るのかといった、たくさんの“なぜ”を下記5テーマに分けて話していただきました。 ①渡る鳥と渡らない鳥 ②鳥の渡りを追う仕組み ③驚きの渡り事例 ④渡りと気象 ⑤経路はなぜ種によって違うのか ここではハチクマの渡りコースについてご紹介します。秋、南に渡るルートは、九州を経由して東シナ海を横断⇒中国本土の海沿いに南下⇒マレー半島を南下⇒ボルネオやジャワなどに行き着きます。春、日本に戻ってくるときは、インドシナ半島までは秋のコースを逆にたどりますが、その後は、中国内陸部を北上⇒朝鮮半島⇒日本へと戻ってきます。往復で2万数千キロの旅です。秋と春のコースが異なるのは、秋は東からの風に乗って一気に海を渡りますが、春は逆風になるため、朝鮮半島経由を選んでいるからだそうです。ちゃんと気象を読んでいるのですね。
※7年間にわたって衛星追跡されたハチクマ1個体7年間の秋の渡り経路(1本の線が1回の経路)
樋口 広芳「鳥ってすごい!」(2016:山と渓谷社)より
講座の様子
樋口 広芳 先生のご講演
道ばたの野草(参加14名)
自然観察大学の小幡 和男 先生を講師にお迎えし、市野谷の森周辺の道ばたに生えている春の野草を観察しました。最初に、おおたかの森センター前の小さな植え込みに、どんな野草が生えているか数えてみると、オランダミミナグサ、ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)、キュウリグサなど、ここだけで20種近くの野草がみられました。オオイヌノフグリとタチイヌノフグリの違い、タネツケバナとミチタネツケバナの違いなど、似た種類の違いを観察したり、つくしの根元を掘ってスギナとつながっていることを確認したりしました。次に、おおたかの森センター横の土手で、メマツヨイグサ、ブタナ、ハルジオン、ヒメジョオン、オニノゲシなどのロゼットを観察しました。ロゼットとは、冬から春にかけて寒さを避けるため、地面に広がる野草の葉の形で、バラの花のように見えるところからロゼットと呼ばれています。柿園横の草地では、クサノオウやトウダイグサの茎を切ってネバネバした汁が出るところを観察しました。森の中では、ウラシマソウの花を観察しました。最初は雄花だったのが、成長すると雌花になるという不思議な性質(性転換)について知りました。漢方薬の元になるヤブランやジャノヒゲの根を掘って比べて見たり、ノビルの球根を掘りだして皮を剥いで試食したりと、体験型の観察会でした。短い時間でしたが、43種の植物を観察することができました。
ヤハズエンドウとスズメノエンドウの違いを観察
ヒメオドリコソウとホトケノザをルーペでじっくり観察
小幡 先生によるヒメオドリコソウとホトケノザ解説
ジャノヒゲとヤブランを観察
スギナ(つくし)
ノボロギク
ヤハズエンドウ(別名:カラスノエンドウ)
セイヨウタンポポ
メマツヨイグサのロゼット
オオイヌノフグリ
ヒメオドリコソウ
クサノオウ