さとやまで開催されたイベントの報告(2025年4月〜2025年10月)です。2021年3月以前はこちら
市野谷の森どんぐりプロジェクト2025(参加29名)
市野谷の森では近年、カシノナガキクイムシという小さな昆虫が木の中に入り込んで発生する「ナラ枯れ」という現象が発生したため、コナラやクヌギなどのブナ科の木がたくさん枯れてしまいました。NPOさとやまでは、豊かな森を未来へ残すため、市民のみなさんと共に「市野谷の森どんぐりプロジェクト」をスタートしました。
まず、集まっていただいた8組のご家族のみなさんと森の周りを歩いてコナラやクヌギなどのドングリを探しました。今年はクヌギがたくさん落ちていましたが、コナラがなかなか見つかりません。その代わり、クリの実がいくつか見つかりました。また、子どもたちは、ツチイナゴやスズメガの幼虫なども発見し、森の生き物たちにも興味津々でした。
次に集めたドングリを水に浸し、健康なドングリを選びました。水の底に沈むドングリが健康な証拠になります。その後、NPOさとやまオリジナルデザインのポットに土を入れ、3個のドングリを1cmくらいの深さに埋めました。
ポットは各組3個ご自宅に持ち帰っていただき、来春、芽が出てきたら6月頃、森の中に作る育苗(いくびょう)区画に植え替えて育てます。さらに冬が来たら、そこで育てた苗を森の中に植樹する計画です。来年の春が待ち遠しいですね。
森で拾ってきたドングリを選別中
水に浸したドングリ
ポットに土を入れていきます
ドングリをポットに埋めこみます
どんぐりポットのセット完了!
クリ(ブナ科)
クヌギ(ブナ科)
※2023年10月撮影
コナラ(ブナ科)
※2023年11月撮影
シラカシ(ブナ科)
樹液に集まる昆虫Ⅱ(参加42名)
6月に続いてテーマは“樹液に集まる昆虫たち”。講師の川北 裕之 先生によると、樹液が出る原因をつくるのはカミキリムシやボクトウガの幼虫(木の幹に傷を付けて樹液を出し、やってきた虫を捕食する肉食のガ)ですが、近年、これらの昆虫が減っているようです。観察を始めてすぐ、桜の幹に大きめのカメムシを発見!東南アジア原産のキマダラカメムシでした。林縁ではあちらこちらに15mmほどの茶色い昆虫がたくさん目につきます。ガのように見えますが、カメムシの仲間で、チュウゴクアミガサハゴロモという外来種。市野谷の森では今年、急激に数が増えています。また、近くをアカボシゴマダラという中国原産のチョウがヒラヒラ舞っていました。市野谷の森でも外来種が気になります。森の小道を行くと、タマムシのキラキラ輝く羽根が何枚も落ちていたり、ヤママユの繭が落ちていたりで、地面にも気を配りながら歩いていると、落ち葉の間からモリチャバネゴキブリが何匹もウロチョロと・・・頭上にも気を配ると、木の枝にコガタスズメバチと思われる古巣がありました。本題の樹液の出る木が少なかったので、前日にバナナトラップを設置しました。前夜の見回りではコクワガタ、ヨツボシケシキスイ、オオクチキムシ、マダラカマドウマなどがいたものの、昼間の観察会ではその姿がなく残念でした。しかし、「オオカマキリ、捕ったぁ!」「カブトムシの死体だぁ!」との嬉しそうな声が。ツマキシャチホコというガの幼虫(無毒の毛虫)や、コカマキリ、クマスズムシなど、いろいろな昆虫を手に乗せてじっくり観察する子どもたち。みんな昆虫が好きなんだなぁ、と実感できた観察会でした。
林縁で葉に付いていた昆虫を観察
捕まえた昆虫をケースに入れて観察
石の下には何がいるかな?
川北先生とセミの抜け殻を調べてみます
チュウゴクアミガサハゴロモ
タマムシの死骸
ヤママユの繭がら
シモフリスズメの幼虫
ツマキシャチホコの幼虫
カブトムシ(メス)の死骸
ライトトラップ(参加:9日35名/23日30名)
夏の夜の恒例イベント、ライトトラップを開催しました。
ライトトラップを行うには、月の出ていない新月や風がなく蒸し暑い日がよいとされていますが、あいにく初日の9日は満月だったため空が明るく、風もやや強く吹いていました。しかし、毎年の定番昆虫であるアオドウガネがたくさん飛来し、みんなの人気者、カブトムシとノコギリクワガタもきてくれました。メタリックグリーンが美しいアカアシオオアオカミキリも参加者の目を惹きます。飛んでいると一見クワガタのような外見のノコギリカミキリもやってきました。さらに、ライトトラップの周りから参加者の皆さんが、オオカマキリやオオゲジなど、色々な生き物を見つけてくれました。オオカマキリを装置のシーツに置いたところ、近くにいたチャバネアオカメムシを捕食し始めました。「クサいのによく食べられるな・・・」と思いながら眺めていました。
一方、2回目の23日は新月で月が出ておらず好条件でした。オオミズアオがライトトラップにきており、手に取ってじっくり観察することができました。翅を広げたサイズが10㎝ほどもあるので、沖縄県に生息している日本最大のガ「ヨナグニサンみたい!」との声も聞かれました。昆虫の数は9日よりも多く、アオドウガネの数は前回の倍以上でした(汗)。そのほか、周辺では、ニホンアカガエルやヤマナメクジ、コクワガタ、昨年も確認された中国原産の外来種ムネアカハラビロカマキリ、などが見つかりました。ニホンアカガエルは素早くてジャンプ力もあるので捕まえるのがなかなか難しいですが、参加者の方が捕まえてくれたおかげでじっくり観察することができました。ヤマナメクジは林内で見られるとても大きなナメクジで最大20㎝ほどにもなるようです(規格外のサイズなので知らないとナメクジには見えないかもしれません)。
7月19日の観察会「夜の森を舞うホタル」時点では、セミがとても少なかったのですが、8月初旬に雨が降り、気温が少し下がったおかげでしょうか?、多くのセミが見聞きできるようになり、今回のライトトラップでも両日アブラゼミとヒグラシを見ることができました。
ライトトラップの様子(8/9)
ライトトラップの様子(8/23)
アカアシオオアオカミキリ(8/9)
ルリゴミムシダマシ(8/9)
ノコギリクワガタ(8/9)
カブトムシ(8/9)
コクロコガネ(8/9)
左:アオドウガネ/右:アミガサハゴロモ(8/9)
チャバネアオカメムシ(8/9)
オオミズアオ(8/23)
ヨツモンマエジロアオシャク(8/23)
フクラスズメ(8/23)
上:ムクツマキシャチホコ/下:アオドウガネ(8/23)
コフキコガネ(8/23)
ムネアカハラビロカマキリ(8/23)
ヤマナメクジ(8/23)
アフタースクールcommonの子どもたちと市野谷の森を散策
おおたかの森S・CのANNEX2にある「アフタースクールcommon」の子どもたちを市野谷の森に案内しました。同所のスタッフの方々以外に子どもたちは39名、ほとんどは、おおたかの森小、大畔小、小山小の子どもたちですが、八木北小に通っている子もいました。この暑さの最中、実際に森を歩いたのは30分ほどでしたが、この森に棲むオオタカやノウサギについて、あるいは森の木々についてお話しました。森の中を歩きながら土や枯木に生えているキノコ、ノウサギが食べたジャノヒゲの跡なども見ることができました。“アオダイショウ以外にどんなヘビがいるのか?”、“この森で一番大きな木は?”といった、たくさんの質問もありました。子どもたちが森やそこにいる生きものたちに、より関心を持ってくれれば嬉しいです。
森の中で市野谷の森について説明
夜の森を舞うホタル(参加43名)
毎年恒例、今年も西初石小鳥の森でホタルの観察会を開催しました。ホタルの観察には、湿度が高く、風のない日がよいとされていますが、当日は湿度が低めで風もやや強く吹いていました。しかし、19:30を過ぎた頃から沼がポツポツと光りだし、最終的に30匹弱のヘイケボタルが姿を見せてくれました。セミの羽化観察も見どころの一つですが、連日の猛暑や雨が少ないせいか、今年は“セミが少ない”とも言われており、セミが見つかるか少し心配でしたが、1匹のヒグラシが羽化するところをじっくり観察することができました。殻から体が少しずつ出てくる様子に参加者一同釘付けでした。さらに羽化前のニイニイゼミ幼虫が地面を歩いているところを見つけた子がいて、「抜け殻が動いている!」と、ビックリしていました。←確かにそう見えます(笑)夏の定番昆虫、ノコギリクワガタとカブトムシも見られました。そのほか、オオゲジ、ナナフシ(ナナフシモドキ)、ウスバカミキリ、落ち葉にそっくりなクロコノマチョウ(葉の上で就寝中)、ハヤシノウマオイ(鳴き声)など、いろいろな生き物が見つかりました。
ナナフシをケースに入れて観察
羽化中のヒグラシ
ノコギリクワガタ
キンランの葉上で寝ているクロコノマチョウ
ウスバカミキリ
オオゲジ
森の昆虫(参加39名)
今回のメインテーマは「樹液に集まる昆虫たち」。講師の川北 裕之 先生 作成の資料には“樹液の出るしくみ”や“樹液酒場”に集まってくる昆虫の番付表などが載っていて面白い!とはいえ、前日まで雨模様で気温が低かったので、昆虫たちがどれだけ現れるのか気にしつつ出発しました。歩き始めてすぐ、上空を何羽ものタカが舞っているのに気づいて騒ぎに!オオタカが2羽、「ピーエー」と鳴くノスリが3羽、広い空を悠々と旋回しています。5羽ものタカが同時に上空を舞う光景は滅多に出会えるものではないので、ちょっと興奮しました。森へ入る前、最初に出会った昆虫はモリチャバネゴキブリやタケカレハの幼虫(毒あり注意!)でした。オオアオイトトンボやオオスズメバチ(女王の死体)なども観察しながら、森の中の広場へ。残念ながら樹液が豊富に出ている木がなく、オオヒラタシデムシ、チャタテムシ類、ホンドクロオオクチキムシ、モリチャバネゴキブリ、ナミガタシロナミシャクなどを観察しました。東近隣公園の散策路の真ん中には、何故か巨大なカブトムシ幼虫の死体とヨツボシモンシデムシの死体が転がっていてビックリ!この日、樹液酒場の番付表に載っているような人気昆虫には出会えませんでしたが、昆虫についての知識が豊富な子もいて、なかなかに賑やかな観察会となりました。
クヌギの根本からにじみ出る樹液を見てみます。
森の中の広場で昆虫探し
川北先生と一緒に見つけた昆虫を調べます。
タケカレハの幼虫(有毒)
オオスズメバチの死体から毒針(産卵管)を
取り出して観察してみました。
チャタテムシの一種(数百匹の集合体)※赤丸内の黒いブツブツ
ムシヒキアブ科の一種(ハエを捕食)
イチモンジカメノコハムシ(ムラサキシキブの葉の裏)
春の樹木(参加13名)
春の樹木の花や新葉を観察しました。講師は、「樹木博士入門」などの本を出版されている、NPO法人 自然観察大学の飯島 和子 先生。まず、出発地のおおたかの森センター周辺の植え込みで、関東の里山を代表する樹木の一つである、スダジイ、イロハモミジ、シャリンバイなどの樹木を観察しました。次に、市野谷の森の林縁で、サイカチ、アベマキ、コクサギ、ムクロジなどの樹木を観察しました。道にはムクロジの果実がたくさん落ちていたので、笛を作ってみました。果実は堅く、フタのような部分をピンセットで取り外し、空いた穴に唇を付けて強く息を吹くと、中の種子が転がって“ピュルピュル”と、ホイッスルのような鋭い音がします。飯島 先生が見本を見せますが、なかなかうまく鳴らず、家に持ち帰って練習することになりました(汗)。さらに林縁を歩くと、シラカシ、ヤマグワ、エノキ、ムクノキ、ガマズミ、ゴンズイ、アカメガシワ、エゴノキ、スイカズラ、ムラサキシキブ、マユミ、ホオノキ、シロダモ、イヌシデ、サンショウなど、雑木林の樹木が次々と現れました。森の中では、ウグイスカグラの赤い実が熟していました。さらに森の中の広場では、ホトトギスの鳴き声が響き渡り、樹木の観察で疲れた頭を癒してくれました。
飯島 先生とムクロジ笛づくり
林縁での樹木観察①
林縁での樹木観察②
シャリンバイ
スダジイ
アベマキ
サイカチ
コクサギ
シロダモ
ホオノキ
講座「渡り鳥たちのフシギ なぜ渡るのか、どういうルートをたどるのか」(参加65名)
おおたかの森センターで、野鳥研究の第一人者で東京大学名誉教授の樋口 広芳 先生に講演をしていただきました。毎年春には、市野谷の森にもキビタキが来て、市内にはサシバも渡ってきます。最近はほとんど見られなくなりましたが、江戸川沿いの新川耕地にはムナグロやチュウシャクシギなどが渡りの中継地として利用していました。何千キロも北へ南へ渡っていく鳥たちは、何故そんな行動をとるのか、どういうコースを辿るのかといった、たくさんの“なぜ”を下記5テーマに分けて話していただきました。①渡る鳥と渡らない鳥②鳥の渡りを追う仕組み③驚きの渡り事例④渡りと気象⑤経路はなぜ種によって違うのかここではハチクマの渡りコースについてご紹介します。秋、南に渡るルートは、九州を経由して東シナ海を横断⇒中国本土の海沿いに南下⇒マレー半島を南下⇒ボルネオやジャワなどに行き着きます。春、日本に戻ってくるときは、インドシナ半島までは秋のコースを逆にたどりますが、その後は、中国内陸部を北上⇒朝鮮半島⇒日本へと戻ってきます。往復で2万数千キロの旅です。秋と春のコースが異なるのは、秋は東からの風に乗って一気に海を渡りますが、春は逆風になるため、朝鮮半島経由を選んでいるからだそうです。ちゃんと気象を読んでいるのですね。
※7年間にわたって衛星追跡されたハチクマ1個体7年間の秋の渡り経路
(1本の線が1回の経路)樋口 広芳「鳥ってすごい!」(2016:山と渓谷社)より
講座の様子
樋口 広芳 先生のご講演
道ばたの野草(参加14名)
自然観察大学の小幡 和男 先生を講師にお迎えし、市野谷の森周辺の道ばたに生えている春の野草を観察しました。最初に、おおたかの森センター前の小さな植え込みに、どんな野草が生えているか数えてみると、オランダミミナグサ、ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)、キュウリグサなど、ここだけで20種近くの野草がみられました。オオイヌノフグリとタチイヌノフグリの違い、タネツケバナとミチタネツケバナの違いなど、似た種類の違いを観察したり、つくしの根元を掘ってスギナとつながっていることを確認したりしました。次に、おおたかの森センター横の土手で、メマツヨイグサ、ブタナ、ハルジオン、ヒメジョオン、オニノゲシなどのロゼットを観察しました。ロゼットとは、冬から春にかけて寒さを避けるため、地面に広がる野草の葉の形で、バラの花のように見えるところからロゼットと呼ばれています。柿園横の草地では、クサノオウやトウダイグサの茎を切ってネバネバした汁が出るところを観察しました。森の中では、ウラシマソウの花を観察しました。最初は雄花だったのが、成長すると雌花になるという不思議な性質(性転換)について知りました。漢方薬の元になるヤブランやジャノヒゲの根を掘って比べて見たり、ノビルの球根を掘りだして皮を剥いで試食したりと、体験型の観察会でした。短い時間でしたが、43種の植物を観察することができました。
ヤハズエンドウとスズメノエンドウの違いを観察
ヒメオドリコソウとホトケノザをルーペでじっくり観察
小幡 先生によるヒメオドリコソウとホトケノザ解説
ジャノヒゲとヤブランを観察
スギナ(つくし)
ノボロギク
ヤハズエンドウ(別名:カラスノエンドウ)
セイヨウタンポポ
メマツヨイグサのロゼット
オオイヌノフグリ
ヒメオドリコソウ
クサノオウ